2011/03/03

リソルジメントとイタリア統一150周年

3月17日はイタリア統一150周年記念日です。

150年前の1861年3月17日、イタリア議会においてイタリア王国の成立が宣言され、
初代国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世が即位しました。

これは19世紀に起こったイタリア統一運動・リソルジメントRisorgimentoの大きな成果です。

それまでのイタリアは、5世紀の西ローマ帝国滅亡以来、外国勢力による分割支配、
ローマ教皇領の成立、都市国家の分立が続き、半島は分裂状態にありました。

その歴史を変えたのは19世紀初め、フランス皇帝ナポレオンによるイタリア統一です。
ナポレオン後の欧州の新秩序を決めたウィーン会議で再びイタリアは分割されたものの、
わずか一時期でも統一されたことは、イタリアの民族意識を高めました。

ちなみに彼の出生地・コルシカ島は、彼が生まれた1769年にフランス領になりましたが、
それ以前はイタリアの都市国家ピサ、続いてジェノヴァに支配されていました。
ナポレオンの生まれたブォナパルテ家のルーツはイタリア・トスカーナ州の貴族で、
16世紀頃にジェノヴァ共和国の傭兵隊長としてコルシカ島に土着したといわれています。
フランス本土に渡った時にフランス風にボナパルトと改名していますが、
今でいう、イタリア系フランス人だったわけです。

さて、そのウィーン会議後から展開されたのが先述のリソルジメント。
初期は秘密結社・炭焼党Carbonariが各地で武装蜂起して革命を主導しました。
続いて、元党員ジュゼッペ・マッツィーニG. Mazziniが結成した青年イタリアGiovane Italiaが
統一運動の中心を担うも、フランスの軍事介入などでそれも失敗します。

代わりに登場したのが、サヴォイア王家が統治するサルデーニャ王国(首都トリノ)です。
サルデーニャ国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世により首相に就任したカミッロ・カヴール
(カヴール伯爵カミッロ・ベンソ)は、革命ではなく外交によって統一事業を進めました。
国内では産業、交通、教育、軍隊の近代化政策を推し進め、立憲君主制国家として
イタリア統一に向けて他の半島諸国の支持を集めます。
さらにフランスなどの大国と同盟関係を結び、イタリア統一に有利な国際関係を構築しました。

 そしてもう一人。軍人ジュゼッペ・ガリバルディG. Garibaldiの登場で統一は加速します。
商船隊の船乗りだった彼は、寄港先での出会いから青年イタリアに参加し、ジェノヴァで
マッツィーニと会見した際に炭焼党にも加わりました。
南米各地の戦争や革命でゲリラ戦術を身につけ、北米や太平洋まで航海をし、
イタリア各地では義勇兵を率いて戦っています。

契機となったのは1860年のシチリア島での反乱でした。
千人隊(赤シャツ隊)と呼ばれる義勇兵を組織し、わずか2隻の船でジェノヴァを出港。
シチリア島マルサラに上陸したのち、各地の反乱軍を取り込みながら全島を制圧。
そのまま海峡を渡ってナポリに進軍し、両シチリア王国を滅ぼします。
そしてなんと、これら南部の征服地を、何の見返りも求めずヴィットーリオ・エマヌエーレ2世に
献上したのです!

イタリア中部諸国もサルデーニャ王国への併合を決め、1861年、統一国家イタリア王国が
建国されました。

マッツィーニ、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世、カヴール、ガリバルディらの名前は、
現在でも各都市の主要大通りの名前になっているので、聞いたことはあるかと思います。
リソルジメントの英傑として、統一イタリア・建国の父として、大きな尊敬を集めているのです。


ガリバルディ千人隊(赤)とサルデーニャ王国軍(青)の進路


Vittorio Emanuele II,  Camillo Benso Conte di Cavour
Giuseppe Mazzini,  Giuseppe Garibaldi

5世紀以降のイタリア半島分裂の歴史から見れば、現在の統一イタリアはとても若い国家です。
各地域ごとの文化的多様性はこの歴史から生まれたもの。
現代イタリア人がいまだに統一イタリア人としての共通意識を持てないのもこのためで、
ミラノ人、ヴェネツィア人、フィレンツェ人、ローマ人、ナポリ人、シチリア人などと自称しています。

「イタリア人として一致団結できるのは4年に1度、サッカー・ワールドカップの時だけ…」と
冗談めかして言われます。
しかし統一150周年を機に、同じ民族としてより強くまとまっていくことを願い、
リソルジメント(=再生・復興)の文字通り、より新しいイタリアの姿を見せてほしいものです。

日本人にとっても、リソルジメントを知る絶好の機会となるでしょう。
ローマ帝国やルネッサンスの歴史は有名でも、リソルジメントがほとんど知られていないことは
残念でなりません。現代イタリアを理解する出発点だからです。
また、統一された1861年は、日本の明治維新(1868年・明治新政府発足)の時期と重なります。
幕末の志士が活躍した近代化への道同様、純粋に歴史物語としても興味深いものです。


こうしたリソルジメントの歴史を振り返る上でも、今年は関連イベントが目白押しです。
統一戦争ゆかりの各地で様々なイベントが企画されているので、注目してみてください。
公式ウェブサイトはこちらhttp://www.italiaunita150.it/(イタリア語のみ)

150周年記念日当日の今月17日は、学校は休校となり、国民の祝日扱いとなります。
首都ローマをはじめ、イタリア全土で祝賀行事が盛大に催されることになっています。

こんなにも魅力的な国が誕生した150年目の記念日、私たちも一緒にお祝いしましょう!

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