2011/12/30

ジェノヴァ名物・フォカッチャ


今年はクリスマスをジェノヴァで過ごしてきました。
この機会に、長年訪れてみたかった同じリグーリア州の海辺の町、レッコに立ち寄りました。
目的はひとつ。ここの名物フォカッチャ(Focaccia di Recco)を食べること!



フォカッチャはピッツァよりもはるか昔からイタリアで食べられてきましたが、
現在特に有名なものは、ジェノヴァのフォカッチャ(Focaccia Genovese)。
生地が柔らかく、そのまま食べるか、ローズマリー、セージ、オレガノ、オニオン、オリーブなどで
風味付けすることもあります。

イタリアのどこでも食べられるフォカッチャですが、誰もがジェノヴァのものは違うと口を揃えます。
使われる小麦粉とオリーブオイルが違うとも言われますが、そもそもフォカッチャが日常に
欠かせない、この土地の食文化に違いがあるようです。

ジェノヴァを歩けば、街角でふいにフォカッチャの香りがすることは珍しくありません。
それはわずか数メートルの間隔で立ち並ぶ、パン屋から漂う香りだと気づくはずです。
甘い朝食を好むイタリア人の中で、ジェノヴァの人々が焼きたてのフォカッチャを朝から並んで
買い求め、朝食でカフェラッテに浸して食べるというのは、非常に特異に映ります。
そうしたフォカッチャへの人一倍の愛情が、どこよりも美味しい味を育てる土壌だということは、
他の料理でも同じこと。

一緒にフォカッチャをほおばりながら、ジェノヴァ育ちの友人が私に言いました。
「(香りの強い)オニオンのフォカッチャを食べた後はキスできないから、気をつけるんだよ」
ジェノヴァっ子は、キスさえあきらめるほど、フォカッチャには目がないということでしょうか…。



さてそんな中、レッコのフォカッチャはさらに一味違います。
小さな町の至るところで、「FOCACCIA COL FORMAGGIO」の文字を発見!
これがレッコ名物、クリームチーズを挟んだ薄いフォカッチャのこと。
チーズにはクレシェンツァ(Crescenza)やストラッキーノ(Stracchino)が使われます。

今回訪れたお店は、地元の人々が一番おいしいと教えてくれた「Panificio MOLTEDO」。
1874年の創業から4代続く、町一番の老舗です。
午後の営業再開16:30にお店のシャッターが開くと、待っていた人々ですぐに店内は埋まりました。
みんなのお目当て、チーズ・フォカッチャが次々に焼き上がり、まさに飛ぶように売れていきます。


このお店で使うクレシェンツァ・チーズは、50年以上もINVERNIZZI社製だけを使用していて、
レッコの伝統的チーズ・フォカッチャの、いわば代名詞なのだとか…。

薄い生地のあいだからとろけ出るアツアツのクレシェンツァが、口いっぱいに広がり、
柔らかい香りが余韻を残す、とてもデリケートな味でした。

コクがあるのに軽い口当たりは、きっと暑い真夏でも食欲を刺激するに違いありません!
海水浴の後の、レッコの浜辺で食べるフォカッチャを、思わず想像してしまいました…。

もちろん冬には身体を温めてくれる味わいがあり、こうして一年中美味しく食べられるのでしょう。
またこの町に戻ってこようと思わせる、これぞ「名物」です。


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